top of page

脂質が細胞膜に与える影響

私たちの体は37兆個もの細胞で出来ていて、その細胞一つ一つが脂質二重層というあぶらの膜で囲われて います。


細胞膜の主成分は「リン脂質」という脂質で、ところどころに「コレステロール」が配置されています。そして、 その合間にタンパク質が埋め込まれた構造をしています。


リン脂質には頭部と尾部があり、頭部はリン酸とコリン(またはセリン、エタノールアミンなど)からな る親水性で、尾部は2本の脂肪酸からなる疎水性です。そのため、リン脂質は水に溶ける部分と水に溶 けない部分を持つという特徴があります。


私たちの体内はほとんどが水で出来ているので、細胞は、例えて言うと水の中の水風船のようなものです。


細胞膜は水と水を区切らなければならないので、親水性であるリン脂質の頭部を細胞の内側と外側(水に触れる側)に向け、尾部の脂肪酸を向かい合わせにする 形で二重の層を作っています。


リン脂質の尾部の2本の脂肪酸のうち、(大抵の場合)一方が飽和脂肪酸、もう一方が不飽和脂肪酸です。


脂肪酸は二重結合の箇所で折れ曲がるという性質があります。飽和脂肪酸は二 重結合がないので真っ直ぐであり、不飽和脂肪酸は二重結合の数が多いほど折れ曲がりの多い脂肪酸に なります。飽和脂肪酸は柱のような役割で、細胞膜の強固さを保つ働きをし、不飽和脂肪酸は細胞膜の 柔軟性や透過性に関わっています。



ここで細胞膜の働きをみてみましょう。


「膜」というと、あまり重要なイメージがないかもしれません が、実は細胞にとってとても重要な働きを担っています。


まず細胞の内側と外側を仕切ることにより、細胞の内部環境を一定に保つ役割です。


例えば、細菌やウ イルス、発がん物質などの有害物質が細胞内に入らないようにするバリア機能をもっていたり、逆に、 細胞に必要な栄養素などを選択的に取り込む機能も持っています。


また、体の中で細胞はホルモンやサイトカインでメッセージを出し合いながら、互いに綿密なコミュニ ケーションをとって働いているのですが、そのメッセージの受け渡しをするのも細胞膜の機能です。


他にも細胞内では常に、取り込まれた栄養素からエネルギーを作ったり、タンパク質を合成することに よってゴミが出ます。そのゴミを細胞内から細胞外に速やかに汲み出すのも膜の仕事です。


このように細胞膜は細胞が正常に機能するために様々な役割を担っているため、細胞膜の質が低下すると細胞を健全に保てなくなってしまいます。


では細胞膜の質は何によって決まるのでしょうか?


リン脂質に結合する2本の脂肪酸のうちの片側である不飽和脂肪酸の二重結合が多い程、柔軟性や透過性が高まると言われています。


不飽和脂肪酸には一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸があり、細胞膜に配置されるそれぞれの割合は 遺伝子によってある程度決まっています。


一価不飽和脂肪酸は体内でも合成出来るので、万が一不足し た場合でも膜の機能に影響することはほとんどありませんが、多価不飽和脂肪酸のオメガ3とオメガ6 は体内で合成出来ません。そのため、食事で摂り入れたバランスが細胞膜の脂肪酸バランスに現れます。


オメガ3とオメガ6では、オメガ3の方が二重結合が多いため、細胞膜にオメガ3脂肪酸が多いと柔軟性や透過性が高くなり、オメガ6が多いと硬く透過性の低い細胞膜になると言われています。


「食べる油を変えると全身が変わる」と言われる理由の一つが、食べる油の質や種類によって細胞膜が変化するためです。


全身の細胞膜のオメガ3とオメガ6のバランスが変わることにより、細胞膜の質が変わり、細胞の集まりである組織や臓器が変わり、ひいては全身の機能が変わるためなのです。


また細胞膜だけでなく、細胞の中の核やミトコンドリア、小胞体などの生体膜も脂質で出来ています。


37兆個の細胞を健康に保つためには、食べる脂肪酸のバランスを整えることが大事ですね。


תגובות


bottom of page